日曜朝の礼拝「キリストの兄弟、神の家族」

　主イエスの母マリアと兄弟たちが主イエスを訪ねて来ました。主イエスが「わたしの母、わたしの兄弟とは、神の言葉を聞いて行う人たちのことである」とお答えになったとあり、主イエスの反応が冷たいものだったと思われるかもしれません。けれども真実には、家族との再会を喜ばれたでしょう。主イエスは決して家族を軽んじるお方ではないからです。

　主イエスは、ここで、いわゆる肉親の家族、「血による家族」以上に大切な結びつきがあることを教えておられます。主イエスは、神の御言葉によって結ばれた新しい人間関係、信仰に基づく新しい家族の関係を提示しておられます。けれども、それは単に神の家族としての教会について教えるのではありません。むしろ、血を絆（きずな）とする家族を念頭において、その血による家族を相対化することに中心があります。

　私たちは罪の悲惨の中に置かれています。罪と破れのゆえに、私たちは、血による家族をよいものとして受け止めることができないという悲惨を、時に経験いたします。家族の中に居場所を見いだせず、家族の関係から逃げ出したくなることが起こります。親子や兄弟の関係は、血のつながりがあるだけに互いに遠慮のないものとなり、しばしばエゴがむき出しになり、醜い争いになってしまいます。

　主イエスは、その私たちに対して、人間の本当の「絆」は果たして「血」なのかと問いかけて、「血」を超えて本当に結び合わせられるべきものがあることを教えておられます。それが神の御言葉であり、信仰です。主イエスは、「神の御言葉」また「信仰」という絆を示して、家族の関係を見つめ直すよう求めておられます。「血の絆」は絶対ではなく、血による家族の関係は相対化されなければなりません。

　それは決して肉親の家族を分断するためではありません。むしろ信仰を絆とすることが血による家族を回復し、新しく結び合わせて一つにすると申し上げたいのです。私たちの家族の関係は、ただそのままで強い絆で結ばれているというのではありません。それは、身の周りで家族の関係が崩れていることをたくさん見聞きすることを思い起こせば明らかでしょう。私たちの人間関係はすべて罪の悲惨の中に置かれていて、血による家族の関係もキリストの救いによって新しくされなければなりません。家族の絆にも罪の赦しによる救いが必要なのです。

　そのことが神の御言葉を聞いて行うことから始まる。主イエスは、そうおっしゃいます。すなわち、御言葉によって神の御前に共にへりくだることができるからです。御言葉によって、自分が完全であると思い上がることを戒められ、自分に破れと欠けがあること、自分が罪人であることを認めることへと導かれます。そうすると、親であり子である、そこにおいても、罪と破れを認めて、互いに受け入れ合う関係が求められます。親も罪人なのであって、赦さなければなりません。兄弟姉妹の関係においても、自分が罪人であることを知ると、兄弟を一方的に非難することはできません。その姿勢が家族においても必要である。いや、親しい家族においてこそ必要なのです。家族の関係は神の御言葉を絆とするところでこそ、真実に健やかなものとされるのです。

　神の家族とされている教会においても、人間関係の破れを経験することがあります。そのところで、御言葉こそが私たちの関係を回復させる絆です。教会は、組織として一つであるだけでなく、神の御言葉の前にへりくだる姿において一つとされていることが大切です。御言葉と信仰における一致が私たちの祈り求めるところなのです。そのことが、神の御言葉を聞いて行うことから始まります。私たちの絆を新しくする御言葉の力に信頼して、御言葉に親しむ生活に共に励んで参りましょう。