日曜朝の礼拝「主によって固く立つ」

　「だから」とあり、フィリピ書全体の結論として、「主によってしっかりと立ちなさい」と命じられています。「主によって」とは「主イエス・キリストの内に」ということです。"in Christ"、「中に、内に」であり、「主にあって」「主に結ばれて」ということです。キリストと結び合わせられていること、キリストを土台とし、キリストに立つことが求められています。

　「しっかり立つ」とは「固く立つ」ということです。戦争の中で敵に攻撃されても持ち場を離れることなく、持ち場を守り抜くという意味で用いられたそうです。敵が戦いを挑んで迫ってきても、自分の持ち場を離れることなく敵と向かい合う。そのような強靱さ、誠実さが、「固く立つ」ということです。ですから、忍耐強いということでもあります。ですから、「主によってしっかりと立ちなさい」とは、キリストという土台に忍耐強く立ち続けなさい、そこで堪え忍びなさいということです。キリスト者の生活の基本は、このキリストに固く立ち続けることにあります。

　私たちの周りには、私たちを主イエス・キリストから引き離そうとする力があふれています。たとえば、この世の力、武力や経済力、学歴や地位こそが役立つ。そのような考え方です。十字架による罪の赦しは、キリスト者でない方からするならば、おとぎ話みたいなものでしょう。「わたしたちの本国は天にあります」という言葉も、あくまで信仰によって理解し、受け入れられるものです。この世が示す現実と、聖書が語っている信仰の現実との間には溝がありギャップがあります。キリスト者はそのギャップに苦しめられます。信仰生活を長く過ごしていても、ギャップを感じて立ち止まらざるを得ないことがあるのです。そのとき、持ち場を捨て去って逃げ出すのではない。信仰の現実に固く立って、持ち場を守り続ける。それが、キリストに固く立つということです。

　私たちの信仰の戦いは、このキリストに固く立つこと、主に結ばれて固く立ち続ける戦いです。そして、それは、今、そこに立つことができていないというのではなく、すでに今、そこに立っているのです、恵みとして立たせられている。その同じところに立ち続けるための戦いです。

　使徒パウロは、「わたしが愛し、慕っている兄弟たち、わたしの喜びであり、冠である愛する人たち」と呼びかけました。「冠」という言葉が目をひきます。当時、「冠」は、一つには、王様が自分の権威を表してかぶる冠がありました。またもう一つ、勝利のしるしとして与えられる冠がありました。マラソンのような競技に勝利した人が、勝ち取った栄誉のしるしとして与えられます。ここでパウロが考えているのは、勝利のしるしとしての冠だと言われます。フィリピの人びとは、あたかも自分に与えられる勝利の冠に等しい、そういうことにほかなりません。そのような、愛する兄弟姉妹たちであるからこそ、主に結ばれて固く立ち続ける者であってほしい、そこにパウロの願いがあり、祈りがあります。

　パウロは、「自分がキリスト・イエスに捕らえられているからです」と語っていました。固く立ち続ける。私たちはそのことに努めますが、それにも増して神ご自身が私たちを捕らえていてくださいます。主なる神が聖霊を与えて、私たちの内に信仰を起こし、志を与え、勇気と希望と力を与えて導いてくださいます。信仰の戦いは、決して自分一人でするものではなく、主なる神に背負われ、担われてするものなのです。神の御言葉が私たちのうちに働いて、ご自身の御業を成し遂げてくださいます。また、私たちは、主にある兄弟姉妹によって互いに励まされ、支えられます。主なる神は、互いに支え合う兄弟姉妹を与えてくださっています。私たちに働く主なる神の御力に信頼して、キリストに固く立つ信仰の戦いを、終わりの時まで忍耐強く戦い抜いて参りましょう。