日曜朝の礼拝「キリストに捕らえられて」

　「わたしは、既にそれを得たというわけではなく、既に完全な者となっているわけでもありません」とあります。当時、自分たちは信仰者とされて、普通の人たちには知られていない神秘的な知識を与えられている、自分たちは神秘的な段階に達するものとされている。そう考えて誇りとする人びとがいたようです。そこでは信仰さえ自分の一部、自分の肉になりかねません。それに対して、使徒パウロは、信仰とは決して既にそれを得たと言えるものではなく、前のものに全身を向けて走り抜くことが大切なのだと言います。わたしも、信仰とは翼あるものなのだと思います。その翼あるものがわたしに与えられて、捕らえようとするのですが捕らえることはできず、握りしめようとすると飛び立ってしまう。捕らえたと思うことはできず、捕らえようと努めているに過ぎません。

　しかし、それでは私たちの信仰の確信はどこにあるのかと思われるかもしれません。パウロは言います。「自分がキリスト・イエスに捕らえられているからです」。主なる神が主イエス・キリストにおいて私たちを捕らえてくださっています。ですから、信仰の確信は、私たちの側に土台があるのではなく、主なる御神の側に土台があります。だからこそ、私たちがどのような状態であったとしても、変わることなく揺らぐことなく確かである。主なる神の側に確かさがあるのです。

　それゆえ、私たちは、後ろのものを忘れ、前のものに全身を向けて、目標を目指してひたすら走ることができます。後ろのもの、これまで自分がしてきたこと、自分が積み重ねてきたことは、何かあればたちまち崩れ去るでしょう。それらではなく、主なる神に確かさがあります。ですから、前のもの、主なる神から与えられるもの、神から恵みとして与えられるものに全身を向けて歩みます。キリストに捕らえられている。そこに確信を見て平安を得て、目標を目指してひたすら走るのです。

　「目標を目指してひたすら走る」とあり、信仰の歩みがマラソンのようなレース、競争にたとえられています。一つには、マラソンには、ゴールとして設定された目的地があって、道をそれることなく、そこにきちんとゴールすることが必要です。私たちの信仰生活も、復活の命に召されている、その目標を見失わない人生を歩んで、とこしえの御国に入れられることが大切です。ゴールしてこその信仰生活です。私たちにはまことの羊飼いであるイエス・キリストが与えられています。聖書を通してキリストの御声に耳を傾けて、人生の目標を見失うことなく歩みます。もう一つ、マラソンに限らずアスリートの方々は自分を鍛えて訓練し、また、節制に努めておられます。信仰生活のためにも自分を鍛えること、節制して自分を整えることが必要です。信仰者としての訓練が大切です。

　信仰の旅路がマラソンにたとえられて、しかし、それは順位を競うというのではありません。私たち信仰者は一緒に走る仲間であり、互いに励まし合って一緒に走ります。目標を見失いそうなときには、互いにこちらが正しい目当てだと教え合い、諭しあいます。疲れて倒れそうなときには、一緒にひと休みしてもよいでしょう。そうして、互いに力を蓄えて、もう一度立ち上がればよい。そうして、信仰の仲間たちと一緒にゴールを目指して走ります。私たちは、教会に集められて共に主を賛美して礼拝します。学びと交わりを共にして、信仰的な訓練を受けます。私たちは、主にある交わりの中で自らを整えて、神と人に仕えて歩みます。

　この信仰の交わりが与えられて、その土台は主なる神ご自身にあります。ですから、私たちの信仰生活は、私たち自身の思いを高く越えて確かなものとされているのです。「あなたがたをお招きになった方は、真実で、必ずそのとおりにしてくださいます」（テサロニケ一5:24）。