日曜朝の礼拝「御言葉に聞き入る幸い」

　まず、マリアの姿に目を留めましょう。「マリアは主の足もとに座って、その話に聞き入ってい」ました。おそらくマリアも主イエスをもてなすために立ち働いていたでしょう。主イエスと弟子たちを迎えて、飲み物を出そう、お食事を用意しようと、慌ただしくしていたのです。そのところで、飲み物を出すか何かで主イエスの近くに行った、そこで聞こえてきた主イエスの言葉、耳に飛び込んで来た声にマリアは捕らえられてしまった。主イエスの言葉には人を捕らえる力があるのであって、マリアは捕らえられて、主イエスの足もとに座って聞き入ることになったのであろう。

　「聞き入る」とは御言葉に捕らえられて、御言葉に夢中になり、耳を澄ませて、聞くことに集中している姿です。「足もとに座る」とは、尊敬する指導者から教えを受ける弟子の姿です。ですから、マリアは、主イエスの弟子とされて、教えに聞き入っていた。ここに、私たちの御言葉を聞く姿勢の模範があると言うことができます。

　次に、マルタの姿に目を留めましょう。主イエスと弟子たちを迎えて、マルタとマリアは慌ただしく皆をもてなしていました。ところが、いつの間にかマリアがいない。マリアは主イエスの足もとで、話に聞き入っていたのです。そのうち戻ってくるだろうと思って、しばらくはそのままにしておきます。だれでも、こういうことを経験するでしょう。いつの間にか自分ひとりになっている。みんなで協力しながらお世話をしていたのに、いつの間にか皆、出払ってしまい、裏方はひとりになってしまった。このときのマルタの気持ちは、だれでも理解できるものです。

　マリアがなかなか戻ってこないので、マルタはマリアに戻ってくるように言い、主イエスにも「手伝うようにおっしゃってください」と願い出ます。主イエスは、立ち働かなければならない必要も、マルタの気持ちもご存じです。ですから、マルタを非難するのではなく、むしろマルタに同情的です。「マルタ、マルタ、あなたは多くのことに思い悩み、心を乱している」。この言葉には、マルタに対する同情といたわりが感じられます。ただ、主イエスは加えておっしゃいました。「しかし、必要なことはただ一つだけである。マリアは良い方を選んだ。それを取り上げてはならない」。

　この「ただ一つ」とはどういうことでしょうか。ここで主イエスは、私たちの人生に必要な「ただ一つ」のことを教えておられます。すなわち、私たちの人生の土台となるものはただ一つ、神の御言葉に聞き入ることなのです。神の御言葉が私たちの人生を根底から支えます。主イエスはマルタに問いかけ、また、招いておられます。マルタにも御言葉に聞き入ることが必要です。御言葉に聞き入ることがあってこそ、マルタの人生も支えられるからです。

　実に、御言葉を聞くこと、御言葉に聞き入ることによって、私たちは主イエスの弟子として生かされます。そして、私たちのあらゆる営みは、主イエスの弟子として歩み、主なる神が祝福してくださってこそ、実りあるものとされます。神の御言葉に養われ、神を神とすることがしっかりしていないと、私たちは、日ごとの生活の慌ただしさの中で、多くのことに思い悩み、心を乱すことに陥ります。平安が失われて、すべてがむなしくなることを経験するのです。神の御言葉に耳を傾けることが、多くのことがある中で私たちの心を一つにし、一つひとつのことに心を込めて取り組むことへと導きます。私たちの日々の生活を聖なる生けるいけにえとして主なる神にささげることができるのです（ローマ12:1）。

　マルタは御言葉に聞き入ることの意味を悟り、主イエスの足もとに座る弟子として生きることへと導かれたでしょう。私たちも、神の御言葉に聞き入り、主イエスの弟子として、この一年、共に歩んで参りましょう。